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物語の悪役は聞き上手が多い

カウンセリングで使われる「傾聴」の技術は、いろいろなところで使われています。意外なことかもしれませんが、映画や漫画に出てくる悪役は、傾聴をしっかりやっていて、聞き上手が多いんです。このコラムでは、悪役たちが使っている傾聴の技術について、解説していきます。

◆◆相手に話をさせる◆◆

相手に、話したいことを思う存分、気持ちよく語ってもらうためには、いくつか気をつけなければならないことがあります。1つは、YES/Noでこたえる質問をぶつけない。これは 閉じた質問(クローズドクエスチョン)といって、相手の話を限定してしまいます。質問するときは、「なぜ?」「どうして?」などという 開いた質問(オープンクエスチョン)をすると、相手は自由に話すことができます。2つめは、自分の話をしない。「あー、そういや俺も」「いいや、俺は違うと思う」などと言うと、相手の話を邪魔してしまいます。自分のことは話さずに、相手の言葉を拾って返す、「オウム返し」をやってみましょう。相手の言葉を使っているだけなので、まったく邪魔にはなりません。3つめは、うなずき、あいづち、です。無反応な相手に話していてもバカバカしくなるだけ。「へぇー」とか「うわ、本当に?」みたいに、感心したり、驚いたり、喜んだり、反応を示すことが大切です。

さて、では悪役がどんな会話をしているか見てみましょう。

悪役が「勇者? なぜここに?(オープンクエスチョン)」と尋ね、勇者が「あなたを倒すためよ。この聖剣を手にしたからには今までのようにはいかないわ」と答えている図
悪役が「聖剣だと・・・?(オウム返し)」と尋ね、勇者が「そう。かのレーサー王が愛用していた伝説の剣レクスカリバーよ」とこたえている図
悪役が「馬鹿な!(あいづち)」と反応し、勇者が「ふふ、後悔しても遅い。愛と勇気の力をしりなさい」と話している図

悪役は、自分の話をまったくしていません。勇者の話を聞き出すことに徹しています。最初はオープンクエスチョンで、幅の広い質問をし、勇者の好きなように話をはじめさせます。勇者が「聖剣」について言及したので、悪役は、勇者が聖剣について話したいのだとわかり、「聖剣だと?」と、聖剣という言葉を拾って返しています。すると、勇者は思う存分、聖剣について話せたので満足です。さらに悪役が、「馬鹿な!」と驚く反応を示してくれたので、勇者はもう得意満面です。悪役がいかに聞き上手であるかがわかったかと思います。

~さいごに~

どうでしたか? 映画や漫画では、読者を飽きさせないようにするため、現実よりも無駄のない会話が繰り広げられます。会話を使って効率よく、読者に説明しようとすると、おのずとどちらかが聞き役になり、カウンセリングのような会話になります。そういう目で見てみると、おもしろいですよ。

 

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